追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

stupid me

廃れ切った
簾みたいな
隙間だらけの心のなか



空っ風が吹き抜ける



昨日の記憶にも
一昨日の記憶にも



ダサい俺しか
見えては来ない




スッ転がった気分で
天空を見上げたら



ほんのりと
青みがかるだけの



無駄にだだっ広い
胸中の虚しさにそっくりで



「何か馬鹿みたいだ」
そんなことを
ぽかんと思う



いや、真面目に
マジで馬鹿野郎なんだろう



二束三文で
買い取られてしまうような
捨てられない想い



何年も後生大事に
し舞い込んでさ




やっぱし
お陽さんが照らすのは
いつも居場所の向こう側



縺れた心抱えたまま
人目を避けて
日陰で暮らす



ドジで間抜け
ゆるキャラみたいな
着ぐるみを纏い



汚し捲っただけ
痛い過去を引き摺り
毎日踏ん張って生きるのさ

























※stupid me
(ストゥピット ミイ)…愚かな自分。

霧寂の過る繊細さと甘さ 折にそこに生けるものの激しい情動と

何処へと
吸い寄せられるよう
すうらりと流れる



朝霧に梳かれ艶剥け
弛い色鉛筆の
スケッチにも似た



かすれた風景のなか
暗色で身を包んだ
自分が佇む




顔前には
節くれ立つ梢がそそと
横疎らに伸びだし



その腹と赤緑の
錆ゆく尖った葉先へ
まるい雫を携え
そっと光らせる



濡れた舗装路に
ずらさず置いた足許から



滑らかに延びゆく
濁り池面の前方には
白銀の踊る風波が




 右手奥で陰掻き
 跳ねる、軽い響きが
 しなやかな
 一輪の波紋を作る



 瞬間が蕩蕩と震える




水面の最外端を
何気に見詰めると
淡枯れ草を
背にのせた長堤



程近い左向こう
なだらかに降る
ぎざつく裾線がくっきりと
くすんだ空に
切れ込みを入れて



その彼方には
毬藻のような
小山がまるで
幽体のように盛りあがる




 じっと眺めていた
 どんな答えも
 求めないまま
 考えてもいた
 思い出せないでいる
 胸底に沈む
 何かをずっと



 目の前にはだけ
 莫と広がる
 乾きながら暮れゆく
 季節の景色より
 あの時
 僕はもっと先を
 続き開ける未来を




湿った空気の匂いが
鼻孔をふうわり逆昇る




 と
 重たい破裂音が
 まるで
 産声のように放たれ



 持ち上がるのに気づき
 眼は素早く
 曲扇形の内脇を視る



 黄いろい胸を
 目一杯に仰け反らせ
 黒い大魚が宙空に



 投げ落とされた
 かのように
 勢いよく飛び上がる




忙しい
群鳥達の目醒めだす
つぶさな声が



静か森から届き出し



南天を高く
視線で辿れば
隠れ陽が空に透け始め
平敷き雲を薄い黄金に
ぽつと
撫ぜ染めていく

Another fall

広く続くばかりの空で
斑に伸べる
鈍色の群雲達に



強い陽熱の
遮られた緩い早朝



そこから漏れだす
一本の優しげな光が



池面に流れる
淡い蒸気霧と静けさ
美しく包み照らし



山中に開けた
見晴らしのよい場景を
クリアに浮きぼる




長息をひとつ放し
何げに俯く視線



足許に吹き溜まる
カラフルな
秋の落ち葉は、まだ



湿ったまま
靴底に砕けず



見回せば頭上を
淋しそうに彩る
いつの間に



ひっそりと染まりゆく
桜並樹の
廃れ葉の群れ



切ない華やかさと
零れおちそうな哀愁




細やかに転がる風が
留まる頬にフロウ



胸焼け起こしそうな
昨今の電波ニュース



明日には簡単に
リセットされる世界



かさつく季節は
移ろいながら
僕だけは変わらずに


















*Another fall
 (アナザー・フォール)…もう一つの秋。