追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

when to stand up

いつから孤独に
慣れてしまったんだろう
記憶すら霞んで


信頼できる友たち
遠く何処へ
繋がりを断って久しい


振りかえり
気がつけば
長い長い歳月が過ぎ去った


一体どこに
向かって進んでいるのか、
今俺は寒空のなか


矛盾が入り乱れる
思考を頭に抱えたまま


枯れ藪に包まれた道程
手探りで踏み込んでゆく


日々生きる糧を得るため
辛い過去から逃れるため


あたたかで安らげる
新たな未来を掴むために


雑念が飛び交う
思考を頭に抱えたまま


出口はあるのかい?
いや、そんなもの
見当もつきゃしない


盲目にただ、先へと
ひたすらに、先へと
胸に感じる微かな光を信じ


行けるところまでだ
この身体が動き続ける限り


自由を求め
歩み続けるのみさ
気力を失うまで、
最後の一滴が燃え尽きるまで





























when to stand up…立ち向かうとき。

想い出は葉屑のように

待っているのかも知れない
あの日からずっと
遠く夕陽が照らす


東の暮れ空を見詰めながら


待っているのかも知れない
記憶の中でずっと
薄闇に染まる峠の池畔


冷たい風吹くベンチに佇み
震える手の平を擦りながら


追憶に転げ増えゆく落葉


待っているのかも知れない
何もかも無茶苦茶に
ぶち壊してしまいたい衝動


胸の奥底に押し殺したまま


待っているのかも知れない
ただ腹をすかせ
このどうにもならない世界に


追い立てられてせかつく
気持ちを抱え込んだまま


虚空に放たれ続けるものを
留めることも出来ずに


見送ることしか出来ずに



眼下には家屋も疎らな
田舎町が灯り始めて
その小さく眩い光の中に


六年前の、あの瞬間


川筋を辿る幹線道で
青信号へ変わる
横断歩道を待っていたのか


俯いたままでそこに


立ち竦んでいただけなのか
君の寂しげな素振り
滲むよう透けて現れ


悔しい気持ちが込み上げる


瞼をぎゅっと閉じて開き
沈めようと暗宙を眺めた


暫くして、もう二度瞬くと


くっきりと近く柔らかに
新たな宵星 背に映して


今でも大事に仕舞っている
緑の公園の写真に収まり 


真白なワンピースで屈み
円らな優しい瞳で微笑んだ
君の姿がほっと浮かぶ


それがとても綺麗で 愛おしく
想えた吐息が零れるほどに

名無し草 ─At the foot of the usual road─

西空へ夜はぐれ星残し
明るみ始めた
仄暗い早朝の幹線道で
排煙の苦臭いトラック
疎らな車達がすっ飛ばす


俺は俺でいつものよう
気忙しく心拍数を上げ
原チャを唸らせて
小賢しく、ぶっ飛ばす


山裾のバイパスを潜る
脇道へと左折する
道なりに進んでいけば


痩せ川の橋路に繋ぐ高架下
辿り登る緩い勾配の頂に
Y字、十字の複合交差点


そこの赤く滲む信号に
毎朝引っ掛かるんだ


路肩に寄り足置き欠伸
目先下見てたら 
なんか生えてるんだよな


歩道に沿う縁石と
油の抜けたアスファルト
その継ぎ目を吹き破り
立ち並んでいたり、
ぽつんと佇んでいたり


そういえばさ
よく見てるんだよな


普段は余り
気にも止めないんだけど


今日はまじまじと眺めた
か細く尖った秋稲色が
小さな枯れ芒にもみえる
雑草なんだよな、
名前なんか知らねえし


不意に思ったんだよ
その姿を十分に歳食った
自分の将来に重ねたのか
もっぱら在り来たりだけど
逞しいなって、それでも


酷く辛いことだって
深く哀しいことだって
凄く嬉しいことだって
煮えくり返るほど
腹立たしいことだって


きっとな
色々あんだろうけどさ


どんな陽に降られようが
どんな風に吹かれようが
どんな雨に打たれようが
どんな雪に被られようが


どんだけ激しく弄ばれ
ひん曲がったりしても
また真直ぐにしゃきっと
胸張って伸びてんだよ


ひっそりと
人知れず踏んばりながら


スゲえよな本当に
俺は給料貰ってやってる
だけど雑草たちは寡黙に
どんな境遇に育っても


文句のひとつも垂れず
仲間を増やすことに
限られた一生涯を捧げて
びっちり地中に根を広げ


堂々とそこを居場所に
頑なに暮らし続けている


ずうっとだぜ?
そう、枯れ果てるまで
邪魔もの扱いされて
引っこ抜かれちまって
塵袋にぶち込まれるまで


俺も何れそこまで強く
どうなんだろな
未来の事なんざ
全然見当もつかねえが
なれたらいいなって


やっぱ見習わねえとな
そんなびしっとした
ブレない生き方なんて
てんでやわな俺にゃ、
無理かもしんねえけどさ























※At the foot of the usual road…
 いつもの道の足元に。