Purasiolite
-波打つノイズの海に やわらかに透き通る ピアノの音色を そっと乗せる 赤錆の滲む鉄骨の 複雑に組み込まれた 難解な立体パズル 整然と縦横に並び 歪曲しながら走り巡る 配管パイプの巧妙な迷路 積もる埃に汚された 剥きだしのコンクリートは 儚い役目を全うし終えた 巨象の骸のように経つ 眠... 続きをみる
指先に灯す
隣にいるのに 視線は変わらず 赤信号に静止する人型に向けられたまま まるで無関心を装う恋人のような 切ない秋の街角 淋しさに痛む胸を擦る さすらい風が 冷たく幾度も吹き抜けて 輝きだす朝の空に 鱗になりきれない淡雲たちを 遠い南へ追いやってゆく 鳴りやまない喧騒は 交差点に溢れ ただ眩く降り落ちる... 続きをみる
淡い秋のペーソス
峠から逸れた脇道 ぐるり曲がって 下り着いた 貯水池の看板の足元から なだらかに登りゆく ざらついたアスファルトを 視線は辿る やわらかな風が すっぽりと開け放たれた東から 確かに色づき 零れそうな樹々の 葉を撫で 細枝をそよがせ 道の端から端へ ゆらりと ふわりと 寡黙な水面に 跳ね... 続きをみる
黒の底に揺れ
酸っぱくも辛くもない ただ 冷たい風に慣れてしまった 早秋の夜更け ぱらつく雨は途絶え 部屋の片隅で 画面の明かりに流れていた 華やかな物語は 涙目と一緒に闇に紛れてしまい とっぷり 落ち窪んだ胸に ふらりカラフルな風船たちが 居場所を見つけたように 転がり込んでは じゃれ合っている 躰は 薄っぺ... 続きをみる