追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

黒の底に揺れ

酸っぱくも辛くもない
ただ 冷たい風に慣れてしまった
早秋の夜更け


ぱらつく雨は途絶え
部屋の片隅で
画面の明かりに流れていた 華やかな物語は
涙目と一緒に闇に紛れてしまい


とっぷり
落ち窪んだ胸に
ふらりカラフルな風船たちが
居場所を見つけたように
転がり込んでは じゃれ合っている


躰は
薄っぺらい寝床に 
また一段と 深く沈み行き
高くのびた暗い虚空に
乾いた溜め息を放りだす



 朝が来れば
 予報通り
 垂れ込めた空の街を歩いている


 朝が来れば
 傘を差した
 憂いを纏う人影の
 濡れた足音とすれ違い


 朝が来れば
 水溜まりを切り 走り去る
 タイヤたちの遠ざかるノイズを
 つぶさに追いかける



今日はまだ
始まらない
始まってやしないのに


晴れ間の見えない場景ばかり
浮かべ 眺めてしまうのは



確かなものを
何ひとつ掴むことの出来ないまま
空き缶の山を
積み上げているばかりの


目的のない自由を
ぶらつきながら
生きてきた


じれったいほど怠惰で
臆病で独り善がりな
自分のせいなのかも知れない

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