追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

さやか季節の余白に浮かべて

峠の森で
土砂崩れに抉られた爪痕が
乾き澄む空へ放される


秋づく景色を破ったまま
無残な姿をはだける 寸断された道路にも
やさしい午後の陽差しは
柔らかな温もりを灯す



乱れ草からむ
雑樹の透き間に
オリーブ色の池の水面は細やかに滲み
やがて 幾重にも連なる
さざ波を作り
煌びやかに瞬く星屑のような
光の群れを集めながら 
しんと
すべらかに現の大河へと運ばれて



はらり、すらら
歩みを向けた帰路の
トンネルの傍らに高く
黄染まる葉は しなやかに
掠れゆく暑き日々の面影を
移ろう刻の風へ 溢すように流れ落ち
その淡く目映い薄身を
ふわりと繁みに溶かしていく



艶めく黒髪を背中に
さらり揺らす懐かしい人影を
道程の先へ遠く 見送るように



そっと 振り返る
たまゆらを癒やす休息に
かけがえのない追憶の情景たち


ひっそりと鎮まる
安寧に満たされた部屋の
恍惚にほどけゆく 藍明の宙にのぼる


ゆるら
たおやかに靡く
鮮麗な彩りに包まれた
夢幻のフレーズを 未だ見ぬ遥かなる憧憬へ
導くように奏でながら

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