追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

微睡みの夢路に雪はまた降り染む

淡いセピアに
落ち着く彩色を滲ませ
息潜む、森の風景は眠るように
とても柔らかで
そして寂しげな陰を担い したためて


干上がりそうな
濁る水溜まりにも似た
剥きだしの砂底が
殺伐とはだく 荒地の姿を模す
郊外に見受ける公園の
グラウンドほどの窪みを
覗き込むように 取り巻く



無造作に差し置かれた
真っさらな画用紙だけが
どこまでも張り敷かれたような
低い空は
放された東へと遠く
眺めの許されるかぎり 途切れず 



足元には 生艶の褪せた
波打つ落ち葉の
ブラウンベージュとピンクが
入り乱れ、肌を寄せ合い
そのなかに
芝生じみた
ふかふ と沈む
しなやかな這苔から食みだす
刈り去られた 束茎の鋭い撓りが固く
ゆっくりと踏みしめる
身の圧しを拒みながら



 小さな綿毛のような塊が
 宙掻き 游ぐように
 ゆらりと ふらと
 漂い始める
 ひとつ ふたつ と継ぎ



 そう 藍夜に満ち過る
 綺羅星たちのように
 数え切れず 増して舞う
 戯れあい、跳ね行き
 駆けくぐり ぽつと さやら



 つらつやと露に骨ばり
 三日月形に立ち並ぶ 桜樹の銀枝と
 重なりはぐれ
 定まらぬまま
 ふっと辺りへ 乗り崩け



 冬らしい情景は
 果無さを帯びて じっと
 振らずに据えた 眼に流れる


 捌け澄み 震えを誘う
 凍み入るような酷しい冷気に
 くるまりながら


  
  こんな折どうして
  四方ぐるり仰ぐように
  胸躍らせて すらり、見回したい
  と 衝動は押したてるのかー



 しんと
 ただ、丸く 膨やかな象りは
 眉根から吹き謳うように 散り
 すゆと ふわら
 愉しげにそよぎ
 くるり はしゃいで



  何も、決して何も
  手を伸ばし掴めるものは
  ここに在りはしない筈なのに


  熱い涙の、うつと
  湧きあがるほどに
  間近に触れ添う 温もり
  仄かに点す 優しさ
  遍く包み宥める 慈しみを
  掬い、童心の奥へ
  深く注いでしまうのだろうかー



このまま 時を止めて
どんな痛みも、嘆きも
叫びも、迷いも、逡巡も
全て棄てて


今だけは この場所に
傷つき、強ばる
両の羽をたたみ
逸る世間を忘れ 静かに委ね


そっと透き
延る闇先で零るよう
ほろり照らす
望みへ繋ぐ 切なる想い
ずっと、解けぬように きっとーーー










生艶…生やかで、活き活きとした艶の意

×

非ログインユーザーとして返信する