追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

晴れやかな 残り夢に変えて

すっぽり包まる
毛布のなか
じわりと、返す吐息の 
暗がりに咲いた
清み解ける場景



 くっきりと
 知らしめるよう
 無調色の
 真珠色に 瞬き震える
 綺羅星の群れ



 そう、あれは
 冷たく澄んだ 峠の外れ
 高い頭上に開いた
 艶めく
 未詳のアンブレラ



 その遥か東向こう
 寡黙に廻る 眩い火輪は
 闇へ延べる
 地平の裏続きで、まだ
 うつらとしている




 静か
 ぐるりと見渡す
 揺るがない深紺のアーチ



 そっと
 瞳を留めた
 オリオン標座の際立つ姿




 傾いた
 広い手杵形のなかに
 くず星が散り
 斜を描く、三連星と
 細やかに引く
 点光の破線が もうひとつ
 宇宙のなかの
 小宇宙
 凝らして視れば
 不思議で奇異な天体図




どうして
今夕
夢みたあとに咲いたのか



眺めて
そして、逸らさずに
語りだす



薄れゆく 面影を重ね
想い
懐く胸が




やがてまた
明日に降り注ぐ
篠つく雨、弾き
心に覗いた 愁いを退け
隈なく
後ろむきな全てを
曝せやしない
秘めたるものまで
洗い浚い
遠ざけて きっと 逃れる為にと















※手杵(てきね)…太い棒の中程の、くびれた部分を握ってつく杵のこと。

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