追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

染みつき 拭い去れず 黙夜を嫉む

うっすらと黄ばみ
埃を被った 
デジタル式カメラ
液晶画像は繰られる



一年前 から
すらりと進め



二年、三年前
彩る季節は廻り



四年前 その
ひと齣に眼を留めた




この秋の頃
一体
どんな風に暮らして

遡る、風景写真のなか
透き通る せせらぎに
艶々と 
飛沫に濡れる
石溜まりに流れ着き
崩れず 
未だ悲しげに
微笑みかける
真っ白な落ち花
ぴったりと身を寄せあい
縁どり、揺れ並ぶ




  上目に思い浮かべ
  情景を辿る
  そう 確かにあの時



  丁度、今と同じように
  求めるものの
  見つからぬまま
  胸のうちに
  拡がり続ける孤独を抱え
  何を放り込んでも
  埋めきれやしない
  虚しさ はぐらかすため
  


  物言わぬ、樹々の切れ間
  そっと佇み
  きらきらと溢れる
  その、
  水音に洗われながら
  常緑の葉叢に挟まれて
  斜めに開け伸びる
  空の小道を 時折
  吸い込まれるよう眺めていた




この密やかな
暗がりのなか
上辺だけを滑稽に
雑踏に零れて転がった
昨日の
話し声たちが泳いでゆく
寒波を抜けた、気の緩み
記憶も
途ぎれ、途ぎれ
輪郭もうつろに
微睡みかけた深宵




綴り始める文字
見失った心は
在り来たりな言葉では
呼び戻すことなど出来ず



程よく冷えた部屋に
ゆらり漂う空気が
悴かまぬ 
手指を見下ろし嘲笑う




それならばいっそ
躰ごと夜闇へ
ほろり 溶けだしたい

投げ出しようもなく
滞るばかりの
くすんだ気持ちが
鮮血の滲む
擦過傷のように疼いて



冬の途中
幾度と知れず
想い 見詰めた
節榑立つ 池畔の桜枝
まだ幼く、固い蕾を



意地らしくも
あの 柔らかに大地を包む
春に向かい
また
一回り大きく 膨らませるのだろう




















※黙夜(もくや)…
押し黙る夜。
ひっそりと、静まり返る夜。

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