追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

胸撫で晴らす 梅雨の戻りに

久方ぶり
夏夕刻の空に鈍く転がる
豪大な重低音



せなせな
と寂しげに下る蜩の声は
次第



仄明る
薄帷の向こうで



人気ない通りに
浮かび始めた
細かな雨脚の響くなか



遅れ拍子で
地面に打ち弾ける
甲高い雨垂れに



また一瞬
手品のように隠されては
か弱く零れる




耳を澄ませば
嬉しそな
かわずの遠鳴き届き



もうひとつ
すぐ傍に
一匹の夜虫の小鳴く



その
冷やされた空気は
肩肌を擦り



静まり返る
片田舎の住宅街を
しっとりと浸す




 所用は済ませ
 欲するまま
 短眠を繰り返す休日



 誰にも気兼ねなく
 脱力した身体を
 十二分に癒せる休日



 思い起こし
 思い煩うこともない
 ニュートラルな休日



 穏やかに運ぶ
 涼やかなときを眺める
 充ち足りた休日



 生きていればそれで
 何はなくとも
 そんな風に思える休日




普段よりも
のんびりし過ぎて
いつの間にやら



眩い細流に瞳ごと
引き込まれ
夢見るよう時は進み



気がつけば



宵闇に染められた
落ち着いた黒の天井を
見詰めている

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