追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

吐き出せず 奮い起てず 泣き言は胸に堪えながら

氷点下の激波が
山間部を襲う
ぴりり骨まで麻痺る
指先を振っては
擦り合わせ
無駄踏みを繰り返し
じんじんと
冷たさののたくる
足裏を宥めた



そんな馴染めない
苛酷な日々が
続く、容赦なしに



陽漏れさえ
覗かぬ未明を
へべれけの
轍も硬直する、
険しい道筋
ハンドルを
取られそうになりながら
スローペースで長駆け
道程の半ば過ぎ
寄り留まり
頃合いを待つ



脇道を辿り
暗に巻かれた池畔に
身を降ろし佇む



鋭利に突き抜ける
冬風の厳しさにぶたれ
そろり歩いては
立ち止まり眺む
寡黙な闇間に
青く浮かぶ路上に


目映さを放つ
ひとつ街灯の
鮮明な光のなか
か細い白糸が糠雨のように
さやさやと
揺れ連なり
流れ落ちる


時折ふっと
襟首の隙に滑り潜り込む
その僅かな一片
溶けた雫がひやり
全身が凍えそう


震えながら
増えてゆく
行き来を重ねた黒い足形
また薄っすら
と少しずつ
静かな柔らかさが
埋めてゆく



けぶるように
立ち昇る吐息は
色濃く宙に滲み失せる
喉元から
吹きだし終えた煙り
と寸分も違わず


爪先を東斜めに
向け返す
峠逸れで望む山並の切れ目
暗く透けた斑空の
おまけ星のような
出勤先の
工業団地の輝きも暈し


押し黙る景色に
じわり踏み締める
厚く降り積もった新雪の
乗せ足に集中した
重さに軋み圧迫される
濁音が、また
鈍く固まり
心臓までも強く打つ



-5度程度の
凍てつく冷気に
取り囲まれたぐらいで
へこたれそうな、この
臆病者そのうえ
ケチ臭く軟弱で
寒さにめげそうな自分を
諫めるようにも


糧を獲るため
走り回り
やみくもに働き
忙しさにかまけ疲れ
乾いていくばかり
上っ面をひた飾る
世俗への無頓着
雑事を蔑ろにする自分に
伸し掛かるようにも

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