追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

散り終えた桜樹に帰す


気力も尽きそな
だらしなく緩んだ躰で
心も闇の中
人気のない 
繁華街の路地裏を
たわいもない理由で
ほっつき歩いてんだ


ぽつぽつ
頼りないネオンの
薄光んなか
すっとまた一片が
てぃらら、ぴぃらら

漂い踊りながら


前髪を掠め
胸元辺りの
少し先を横切り
不意を突いて
足許に
不時着したりするのさ


そのたびに
真っ昼間の
賑やかな花見の情景が
おでこの広みに
硫黄くさい
マッチ棒の明かりみたく
柔らかに浮かんで



嗚呼、
今年も春が来て
あの花が
淡桃の花たちが、
眩く華やかに
頭上で満開に
咲いてんのかって思うんだ



あれからまた、
一年遠離ってしまったよ


もう、
六年くらいは経つのにさ



メロンカラーのスエット着た
君によく似た娘が
目の前の歩道を
自転車で通り過ぎた
この間の記憶も
夢みたいに現れたり 
視界に透けて


よくワカンナイよな
掴み所のない真夜中
遠目にはカラフルな
夜街灯の群れ
星屑たちが
舞い降りて来たみたいに
ご機嫌な気分にもしてくれる



一体俺は今、
どこにいるんだろうな
きっと
ぼんやりした天国に近い場所で
うとうとしている


ただ、
それだけのことなのかも
知んねぇな


胸につっかえていた
後悔の塊どこへやら 
いつの間にか
息苦しさも晴れた


もしか
虚弱体質で軟弱な
腑抜けた俺が
過労でぶっ倒れでもしたら
花弁の散り終えた
桜樹の根元に埋めてくれ

×

非ログインユーザーとして返信する