追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

With my dizzy head ━抜け出してクラつく頭で━

膨れた熱を孕んだ空気
だらしなく脱力した
昼間の部屋を記憶に浮かべ
寡黙さだけが躰を素通り
浅い溜息 唇から漏れ


静かこめかみに意識は滲む


僅かばかり開けといた
少々破れた障子戸と
格子柄カーテン越しの窓から
未明の涼風 仄かな柔かさが
瞳を閉じた横顔に触れる


その感覚は寄る辺ない
ちゃちな俺の心を
見透かすように沁みて
居たたまれず得も言われぬ
孤独さから逃れるように


二段重ねのボール箱みたく
安っぽい肌色の家をでた


暈け暗の中途半端な時分
ほとんど車の姿も見えない
街道をすっ飛ばしていく
この街で今起きてんのは
コンビニの店員と変テコな輩
新聞配達に勤しむ連中


徐々に掠れ淡くも青く
溶けだす空を見流して
翠黛めざし急坂を駆け上がる
そのうねり登る弓なりのカーブ
豪華な慰霊の花束 瞬時に
脳裡に焼きつき離れねえ


淋しさ清しさ混ざり
不甲斐なさと悔しさ
妙な鬱憤も序でに引きずって
この降って湧いたど辛い夏も
乗り越えて行かなきゃなと
思いを巡らせながら


より高く濃く深く
蛇行を繰る 冷気を帯びた
舗装のいびつな狭路
小型のバイクで漕いで


ああ、氷みたく冷てぇ
モスグリーンのアーチを
幾つも何回も心地よく
潜り抜けているうちに
いつの間にか
辿り着いちまった 
南の湾を見下ろす展望台に


汗だくの気持ち
荒れ風が軽やかに踊らせる


そこには途絶え掛けた
無数に拡がり
散らばる建物の疎らな灯り
パノラマに伸べる
霞み連なる長影絵の島々が
この手で掬えそうなほど
間近にみえるってのに


落ち着いて呼吸を宥め
見守る 細やかに
綺羅つく眺めをそして
消えかけちまう 夜深の魔法
刻々と艶の失せていく
状景から踵を逸らせば


昇りだしたばかりの
数時間後にゃ
灼熱のサンライズ 右の眼尻に
グラスオレンジの光塊が
棚引く燻み雲の積もった
東の彼方の空を
燃やすように眩く照らし
この残酷な世界を、また
入念に染め始めてやがる
























※With my dizzy head…
めまいがする頭で。

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