追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

名無し草 ─At the foot of the usual road─

西空へ夜はぐれ星残し
明るみ始めた
仄暗い早朝の幹線道で
排煙の苦臭いトラック
疎らな車達がすっ飛ばす


俺は俺でいつものよう
気忙しく心拍数を上げ
原チャを唸らせて
小賢しく、ぶっ飛ばす


山裾のバイパスを潜る
脇道へと左折する
道なりに進んでいけば


痩せ川の橋路に繋ぐ高架下
辿り登る緩い勾配の頂に
Y字、十字の複合交差点


そこの赤く滲む信号に
毎朝引っ掛かるんだ


路肩に寄り足置き欠伸
目先下見てたら 
なんか生えてるんだよな


歩道に沿う縁石と
油の抜けたアスファルト
その継ぎ目を吹き破り
立ち並んでいたり、
ぽつんと佇んでいたり


そういえばさ
よく見てるんだよな


普段は余り
気にも止めないんだけど


今日はまじまじと眺めた
か細く尖った秋稲色が
小さな枯れ芒にもみえる
雑草なんだよな、
名前なんか知らねえし


不意に思ったんだよ
その姿を十分に歳食った
自分の将来に重ねたのか
もっぱら在り来たりだけど
逞しいなって、それでも


酷く辛いことだって
深く哀しいことだって
凄く嬉しいことだって
煮えくり返るほど
腹立たしいことだって


きっとな
色々あんだろうけどさ


どんな陽に降られようが
どんな風に吹かれようが
どんな雨に打たれようが
どんな雪に被られようが


どんだけ激しく弄ばれ
ひん曲がったりしても
また真直ぐにしゃきっと
胸張って伸びてんだよ


ひっそりと
人知れず踏んばりながら


スゲえよな本当に
俺は給料貰ってやってる
だけど雑草たちは寡黙に
どんな境遇に育っても


文句のひとつも垂れず
仲間を増やすことに
限られた一生涯を捧げて
びっちり地中に根を広げ


堂々とそこを居場所に
頑なに暮らし続けている


ずうっとだぜ?
そう、枯れ果てるまで
邪魔もの扱いされて
引っこ抜かれちまって
塵袋にぶち込まれるまで


俺も何れそこまで強く
どうなんだろな
未来の事なんざ
全然見当もつかねえが
なれたらいいなって


やっぱ見習わねえとな
そんなびしっとした
ブレない生き方なんて
てんでやわな俺にゃ、
無理かもしんねえけどさ























※At the foot of the usual road…
 いつもの道の足元に。

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