追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

汚れはする 磨り減らない上履きと、  似て


仲秋の
未 明、 薄い紫の夜空は
ゆるやかに  集う
鈍雲の群れに酔いしれる
 色濃い
丸月を  描いて  弄ぶ



その裏側から 
屑星、たちの 
やわらかな微笑が 降り注ぐよう
夢見る森を下り
住宅の 犇めく路地に
滑りだし  普く散りばめられた
求愛の瞬きは 
今も 絶えまなく 傍らに



そばだてる耳へ
闇の寝息が また、ひとつ
遠くで唸って、
重苦しく歪んで 拡がり 立ち昇る
と、 呼吸を止めるように
俄かに失せた  た



  高い暗宙から 意識は
  雫の姿に凝縮され
  まるで 堕ちてゆくようで
  深奥の湖に 掌を叩く間に に
  刹那の速度で 点に向かい
  鋭く打ちつけ 強く弾かれ て
  飛沫になり、舞い上がる 
        暴れ 踊るように
  甲高く突き抜け 音の波は
  鼓膜を貫く  と、揺らぐ
  響き     き



錯覚、虚ろに
見上げた まま



  それ程にまで 不意に 
  漏れだすとする 掴めぬ雨の
  ひと粒に なり変わりたい  のか
  
  この 惰性に凭れる
  曖昧で ぬるい停滞   感を
  悉く   掻き乱したい   のか


  それとも 足首に
  纏わるような諦念から 逸早く
  遠ざかり、    逃れたい  のか 



  と



盲目に
細やかな  無数の根を、
澱んだ胸に 張り 巡らせて
平たい時の  過ぎ去る 末尾
 じわり  手繰るように
      取り留めもなく



眉に振れる
前髪を開いて そっと
艶めかしい  穏やかな風が
ほのか  酸味の混じった、 
淡い  蜂蜜の香り  を
続けざまに運び
歩みを 置いた  
吸い込まれそうに 傾斜のきつい
坂道の傍で
 無関心に閉じた   
            唇を、掠めている

×

非ログインユーザーとして返信する