追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

振り返り物思う淡き吐息と

高く木立の向こう
鈍曇の切れ目に 覗く陽
絡む内の網枝を照らし


麓に急ぎ走る北風が
見渡す情景に染まりゆく
森の樹々を騒がせる


家々で犇めくばかり
人影少ない寡黙な狭道
潜り抜け登った飛び地


散る葉ら宙に踊り
そしてふらり落ち
かさり鳴って舞い転び


路壁の隅へ打ち留まり
また集まる落葉が膨らむ
仲間が増え温かそうに



それだけで何故だか
ぬくもり滲む寂れる心に



すっと見遣る彼方の空
ふんわりと昇れそうな
明るい水彩のキャンバス


南の島までゆらり本当
流され運ばれ穏やかに
トロピカルドリンクでも


海辺で啜り波音を聴き
何でもいいや小説などと
ハンモックに乗っかり


時を忘れて日没までさ
のんびり過ごせたらな
描き視る額の裏側


木枯らしが途端に
鋭く素早く吹き消して
物陰に隠れ またかと
冷えた躰を縮こめた



凍えそな寒さに強張る
骨身、時折震わせながら



この兎年も年の瀬
自分の人生ももう半ば
暮れ入る午後を眺める


腕時計の刻いつの間に
何も決められないままで
このまま行くのもそう


悪くは無いかななんて
ふと忘れては思い返す
こんな何気ない一日でも


何事もなくぶじ過ごせた
中々の良い日だったと


ちょっとだけコミカルで
細やかな幸せの一つに数え
想い出達が揺蕩う追憶の
ファイルにそっと綴じて

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