追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

想い出は葉屑のように

待っているのかも知れない
あの日からずっと
遠く夕陽が照らす


東の暮れ空を見詰めながら


待っているのかも知れない
記憶の中でずっと
薄闇に染まる峠の池畔


冷たい風吹くベンチに佇み
震える手の平を擦りながら


追憶に転げ増えゆく落葉


待っているのかも知れない
何もかも無茶苦茶に
ぶち壊してしまいたい衝動


胸の奥底に押し殺したまま


待っているのかも知れない
ただ腹をすかせ
このどうにもならない世界に


追い立てられてせかつく
気持ちを抱え込んだまま


虚空に放たれ続けるものを
留めることも出来ずに


見送ることしか出来ずに



眼下には家屋も疎らな
田舎町が灯り始めて
その小さく眩い光の中に


六年前の、あの瞬間


川筋を辿る幹線道で
青信号へ変わる
横断歩道を待っていたのか


俯いたままでそこに


立ち竦んでいただけなのか
君の寂しげな素振り
滲むよう透けて現れ


悔しい気持ちが込み上げる


瞼をぎゅっと閉じて開き
沈めようと暗宙を眺めた


暫くして、もう二度瞬くと


くっきりと近く柔らかに
新たな宵星 背に映して


今でも大事に仕舞っている
緑の公園の写真に収まり 


真白なワンピースで屈み
円らな優しい瞳で微笑んだ
君の姿がほっと浮かぶ


それがとても綺麗で 愛おしく
想えた吐息が零れるほどに

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