追想の彼方

自然の中で、日々の暮らしの中で…移り変わり揺れ動く心の内を 気儘にも身勝手にも感じるままに。

セピア色の傍観

この間 幹線路と
脇道二カ所で 
  幅広タイヤに
  圧し轢かれた、
    血塗れの 亀を見た




 




  空になる








そそくさと、手早く
 破線を跨いだ
分度器型の
 駐停車スペースに
 ポイ捨てされた
 吸殻を拾って
原動機付
   自転車に跨り、
峠を下って行く
あの、ギンガムチェック
 の割烹着を纏った
 おばさん
 恰好 よかったな、
な、








駅前は、相変わらず
人で込み合っている
パチンコ玉みたいに 改札 
 から噴き出して
 ゴ ロ ゴ ロ
開発途中の
ロータリー工事現場で
ゆるやかに分裂し、
多方向へ別れて それでも
 ガ ヤ ガ ヤ
 街の みち筋を
そよ風の掬う水面が 
軽い ささくれを
運ぶように
横滑りしながら 進んでいく








  短絡的に
    思考して








郊外の
大地には 山岳を含め
多少の起伏
 勾配は認識できるものの
 しかし、
靴の裏側に
丸みを覚えるのは
足元に転がる
石ころを踏みしめた直後
 ぐらいだったりする
 この星は球体だと言うが
 その割に、
陸上から
曲がって見える海などなく
都市遠景の 眺めは
 撫で付けられたように
 どこもかしこも
 平べったい
一体全体、
 どういう訳なんだろう








  温度を
    取り戻し








昼は肌着姿で寝そべり、
夜中には
 両の腕さするほど
 寒く 震えるほど
と、すぐさまパジャマの袖
を通して
 そんな毎日を
 思い返し ほくそ笑む
定まらず  
移ろう秋は
  ひと手間かかる
   少し、変で
  寂しげな 時節 








  乾いてゆく








近くにいるのに
 遠くから
臨んでいる
いつしか、過ぎ去った夏に
置きざりにされた
大切な記憶
戻れない
輝きに
満ち溢れた、日々の欠片
幻影に揺らぐとき
留めどなく押し寄せ
また忘却に
くだけ落ちて
今、
  何処へ
        縷々と流離い








百十円で捌かれる
中古本の
幸運にも書棚から引き抜か
れた
  最後の頁の
  最後の一行に
     なりたがっている
のかも知れない
           僕は

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